終末医療、そして光

クオリティオブライフ

がんの末期患者に対して、しばしば用いられるクオリティ・オブ・ライフ (Quality of Life・略してQOL) という言葉があります。このQOLは、もともとは余命を宣告されたがん患者に対してだけ用いられれる言葉ではありません。


一般社会において、人間一人一人の人生における内容の質(クオリティ)や社会的にみた生活の質のことを表した言葉なのです。人が人生においてどれだけ人間らしい生活、自分に相応しい生活を送り、幸福を実感しているかの概念なのです。


ここで語られるQOLの「幸せ」とは、まず健康、素敵な友人や知人、家族に囲まれた良好な人間関係、やりがいを見出だせる充実した仕事、快適で満足できる住環境、必要十分な教育、スポーツ活動、好きな趣味などの多種多様な観点から計られるのです。このQOLには、自分の属する国家の発展、個人一人一人の人権や自由が保証されている社会環境なども求められる条件となっています。つまり、QOLとは個人の経済的な豊かに導かれる生活水準とは別次元として考えられるべきものなのです。


このQOLの思想が医療におけるクオリティ・オブ・ライフに生かされていると言えます。前述した社会一般の理想のQOLには届かないかも知れませんが、療養患者の環境なりのQOLの向上が望まれています。がんの末期患者に限らず、長期療養を必要とする患者、体力消耗の激しい患者や進行性疾患の患者に対して、過剰な延命治療、患者への肉体的苦痛の大きい治療を継続することは患者本人の「人間であることの喜び」や「生きていることの充実感」を著しく阻害するものです。このような状況を「QOLが低下している」と表現されています。


これに対して、患者自身が生きている実感と尊厳を保つことが可能な生活を実現することが「QOL(生活の質)を向上させる」ことに繋がるのです。患者に対する様々な治療行為の影響で生じた、排泄や運動・視力・食事などの障害は総じて「QOLの低下」と表現されています。治療によって発生した障害や合併症状の影響は患者の療養生活にとって極めて重要な問題であり、これをQOLとして認識して適切に対応することが医療機関に求められていることなのです。